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2020年03月23日お役立ち情報

配偶者居住権という新しい制度が始まりましたので解説します

配偶者の居住権を保護する制度が開始されます

今年の4月1日から、相続に関する新たな制度が始まります。

それが、配偶者短期居住権配偶者居住権です、

被相続人の配偶者の居住権を保護するための制度です。

 

 

こんな制度です-配偶者居住権

平均寿命が昔より伸びた昨今、連れ添いの方がお亡くなりになった後も、残された配偶者の方は長期間生活を継続しなければいけないことは珍しくありません。

配偶者としては、慣れた自宅にそのまま住みつつ、生活資金についても必要な分を相続したいところです。

しかし,遺産の総額と自宅の評価額によっては、自宅以外の遺産を取得できず、老後の生活に支障をきたしてしまうケースもあります。

そこで、残された配偶者に居住建物の無償の終身使用を認めて居住権を保護しつつ、

その居住権の財産としての評価額を所有権のそれよりも低くすることで、金銭等の他の遺産を取得しやすくし、

残された配偶者が生活基盤を整えられるように配偶者のための制度が創設されました。

それが、配偶者居住権です。

 

改正の理由(中間試案補足説明より)

「配偶者の一方が死亡した場合でも、他方の生存配偶者は、それまで居住してきた建物に引き続き居住することを希望するのが通常である。特に、相続人である配偶者が高齢者である場合には、住み慣れた居住建物を離れて新たな生活を立ち上げることは精神的にも肉体的にも大きな負担となると考えられる。また、相続開始の時点で、配偶者が高齢のため自ら生活の糧を得ることが困難である場合も多くなってきていることから、配偶者については、その居住権を保護しつつ、将来の生活のために一定の財産を確保させる必要性が高まっている。配偶者に住み慣れた居住環境での生活を継続するための居住権を確保しつつ、その後の生活資金としてそれ以外の財産について一定程度確保することが狙い。」

 

取得できる条件

被相続人の配偶者が、

被相続人の財産である建物相続開始時に居住していて

次のどれかに該当したときに、

遺産分割協議により、配偶者が配偶者居住権を取得することが決定されたとき

・被相続人の遺言により、配偶者に配偶者居住権を遺贈するとき

・被相続人と配偶者間の生前の契約により、配偶者に配偶者居住権を死因贈与するとき

家庭裁判所の審判により、配偶者が配偶者居住権を取得するとき

その建物を無償で使用収益する権利を取得します。

 

終了する時期

原則、配偶者が亡くなるまで居住権は継続します。

ただし、遺産分割協議、遺言、死因贈与契約、遺産分割審判において、

期間の取り決めをした場合は、その期間が終了するときまでとなります。

 

注意点

適用されるのは、施行日の令和2年4月1日以降に開始した相続のみ

・施行日前に遺贈の目的とされた場合も適用なし

 ✕ 令和2年3月31日に被相続人死亡

 ✕ 令和2年3月31日に作成した遺言で、配偶者居住権を遺贈し、令和2年4月1日に被相続人死亡

 ✕ 令和2年3月31日に契約した死因贈与で、配偶者居住権を遺贈し、令和2年4月1日に被相続人死亡

・相続開始時に、その建物が被相続人と他の者との共有となっていた場合は適用外

・被相続人と同居していなくてもよい

内縁の配偶者には適用されない

・配偶者の死亡により配偶者居住権は終了する

・配偶者居住権の譲渡はできない

・配偶者居住権の設定の登記されていれば、第三者に対抗できる

 所有者が建物を第三者に売却しても、登記をしていれば、第三者に権利を対抗できる=住み続けられる

・建物の所有者は、配偶者居住権を取得した者に対して、配偶者居住権設定の登記をする義務がある

・相続開始前と同様の方法で、建物を使用収益しなければいけない

所有者が是正の催告をしても是正されなければ、所有者は配偶者居住権を消滅させることができる

・建物を使用収益するにあたり、善管注意義務が求められる

・建物の改築または増築するには、建物所有者の承諾が必要となる

 所有者が是正の催告をしても是正されなければ、所有者は配偶者居住権を消滅させることができる

・建物の修繕は、建物所有者の承諾なく、配偶者ができる

・第三者に建物を使用収益させるには、建物所有者の承諾が必要となる

 

こんな人にはオススメ

私が今まで経験してきた相続案件では、

夫が亡くなり、他に相続人(子ども)がいても、

相続人間の遺産分割協議で、妻が夫の財産を全て相続するケースが多く、

自宅も生活資金も確保できていたため、

このような場合は、配偶者居住権が必要になることはないでしょう。

しかし、配偶者が子どもたちと仲が悪かったり、何かの事情により子の誰かが遺産が必要な場合には、

配偶者居住権を活用した方がいいでしょう。

 

例えば、被相続人の主な財産が、

自宅の土地建物(評価額1000万円)と預貯金(残高1000万円)

であった場合、

配偶者と子どもたちが法定相続分での遺産分割協議をすると、

配偶者は自宅か預貯金かの二択を迫られます。

配偶者が高齢者で、自身の財産が少ない場合は、どちらを選んでも大変な思いをされるかもしれません。

しかし、配偶者居住権を設定することができ、その評価額が500万円の場合は、

自宅に住み続けることができ、500万円の預貯金も取得でき、今後の生活資金に充てることができます。

 

 

こんな制度です-配偶者短期居住権

従来の判例(最判平成8年12月17日判決民集50巻10号2778号)の

配偶者の当面の間(遺産分割で建物の所有関係が最終的に確定するまで)の居住権を認める

という趣旨を明文化し、短期的な居住権をより保護するために法整備された配偶者のための制度です。

 

改正の理由(中間試案補足説明より)

「配偶者の一方が死亡した場合でも、他方の生存配偶者は、それまで居住してきた建物に引き続き居住することを希望するのが通常である。特に、相続人である配偶者が高齢者である場合には、住み慣れた居住建物を離れて新たな生活を立ち上げることは精神的にも肉体的にも大きな負担となると考えられることから、高齢化社会の進展に伴い、配偶者の居住権を保護する必要性は高まっている。」

 

取得する条件

被相続人の財産である建物相続開始時無償で居住していた場合に、

その建物を無償で使用する権利(建物の一部のみを無償で使用していた場合は、その部分のみ)

を取得します。

短期的な居住権を保護することが目的なので、

遺産分割協議による合意や、遺贈の目的物としての指定がされていなくても、当然に取得します。

 

終了する時期

遺産分割をする場合

遺産分割により、その建物の帰属が確定したとき(ただし、相続開始から6か月間は居住権が保障される)

 

配偶者以外の者遺言または死因贈与でその建物を取得した場合、配偶者が相続放棄をした場合

その建物を取得した者が、配偶者短期居住権の消滅の申入れをした日から6か月を経過したとき

 

注意点

適用されるのは、施行日の令和2年4月1日以降に開始した相続のみ

・その配偶者が相続欠格または相続廃除に該当し、相続権を失ったときは取得しない

・被相続人と同居していなくてもよい

内縁の配偶者には適用されない

・配偶者の死亡により配偶者短期居住権は終了する

・建物の全てが無くなっても終了する

・配偶者短期居住権の譲渡はできない

・第三者に対抗できない

・権利の範囲は、使用権のみ。収益権は無し

・相続開始前と同様の方法で、建物を使用しなければいけない

 違反したときは、所有者は配偶者短期居住権を消滅させることができる

・建物を使用するにあたり、善管注意義務が求められる

・第三者に使用させるには、建物取得者の承諾が必要となる

 違反したときは、所有者は配偶者短期居住権を消滅させることができる

・建物の修繕は、建物所有者の承諾なく、配偶者ができる

 

 

配偶者居住権のご相談は

配偶者居住権の設定を希望されるときは、相続法だけでなく登記に関する知識も必要になりますので、

相続と登記の専門家である司法書士にぜひご相談ください。

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治