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2020年04月06日お役立ち情報

疎遠な親族の遺産を相続するときにやるべき財産調査のやり方

今までに一度も会ったことが無い親族の相続人に自分がなってしまうことがあります。

例えば、幼い頃に父を亡くした方が、その父方の親族と疎遠のまま過ごすうちに父方の祖母が亡くなり、その相続人となった場合(代襲相続)などです。

そして、もし、その相続人が自分ただ一人だけで、相続財産に関する資料や情報に乏しい場合、

その財産を相続してもよいものでしょうか。

 

 

遺産承継か、相続放棄か

相続財産には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もあります。

プラスの財産もマイナスの財産も丸ごと受け継ぐのか、

それとも、プラスの財産もマイナスの財産も一切を放棄するのか。

プラスの財産が多いのであれば、できれば相続したいのが人情というものです。

今回は、相続財産の調査方法についてお話します。

以下の方法は全て「相続人」としての調査をしますので、手続きの際には、戸籍謄本等の相続人であることがわかる証明書が必要となります。

色んなところに照会をしますので、一見して相続関係がわかる法定相続情報一覧図をあらかじめ取得された方がよいでしょう。

なお、限定承認というプラスになっている部分に限り相続する手続きもありますが、

現状この手続きは大変な手間が掛かるためか、あまり利用されておりませんので、ここでは考慮しないものとします。

 

 

調査先① 年金事務所

被相続人が国民年金または厚生年金を受け取っていた場合、受取口座が登録されています。

年金事務所で照会し、該当者がいれば、「受取口座の金融機関の名称、取扱支店、口座番号」が判明します。

受け取り金額の多寡はともかく、年金自体を受け取っている高齢者の方は多いです。

基礎年金番号が分かる資料が無い状態で照会をかけるため、

「氏名」「住所」「生年月日」の情報が一致していることが求められます。

法定相続情報一覧図、戸籍謄本や住民票の除票(または戸籍の附票)といった証明書を用意しましょう。

照会の手続きはどこの年金事務所でも可能ですが、窓口まで行く必要があります。

年金事務所はお昼頃だと結構混むので、行くなら朝一が良いでしょう。

 

 

調査先② ゆうちょ、都銀

次に、支店数が多い全国規模の金融機関に被相続人の口座があるかを調査します。

・ゆうちょ銀行

・三菱UFJ銀行

・三井住友銀行

・みずほ銀行

・りそな銀行

高齢者の方は、ゆうちょ・三菱UFJ・三井住友のどれかの口座を持っている方が多い印象があります。

通帳やキャッシュカード等の支店名や口座番号が分かる資料が無い状態で照会をかけるため、

「氏名」「住所」「生年月日」の情報が一致していることが求められます。

法定相続情報一覧図、戸籍謄本や住民票の除票(または戸籍の附票)といった証明書を用意しましょう。

金融機関に住所変更の届出をしていないこともありえるため、住所がわかる資料としては、

住民票の除票より、住所変更の履歴が得やすい戸籍の附票の方が便利かもしれません。

どこの支店でも口座の照会が可能ですので、最寄りの支店窓口で手続きをすればよいと思います。

また、ゆうちょ銀行にはそもそも取扱支店自体がありません。

 

 

調査先③ 自宅近くの地域金融機関

被相続人が最後にお住いになっていた場所の近辺にある信用金庫等の地域金融機関で口座を開設していることもあります。

私の母も、年金の受取口座を自宅近くに新しくできた信用金庫の支店に変更していました。

高齢になると、身体的な事情により、少しでも自宅から近い金融機関の方が楽だからとのことです。

ただ、駅近くにお住まいだと該当する店が多くて、全てに照会をかけるのは大変かもしれませんので、

①②だけでは不十分な結果しか出なかったときに補充的に調査するのが良いかもしれません。

 

 

取引履歴の取り寄せ

金融機関に照会をして口座が判明したら、過去一年分の取引履歴を請求しましょう。

単に残高の額だけを把握するためだけではなく、口座の出入金の記録を見れば、

収入と支出の状況を把握できますので、他のプラスの財産とマイナス財産の推測もできます。

株や投資信託の配当が入金されていれば、株や投信信託を保有していることが分かりますし、

固定資産税が引き落としされていれば、不動産を所有していることも分かります。

クレジットカードの支払いをしていれば、クレジットカード会社に照会をして、ショッピングやキャッシングの未払金が残っていないかを調査することができます。

その他、電気水道等の公共料金、電話料金等の支払い状況(滞納の有無)も分かるかもしれません。

 

 

調査先④ 信用情報機関

信用情報機関とは、個人の信用情報(本人の勤務先や年収、クレジットカードやキャッシングの契約状況、借入返済などの取引状況など)の収集と管理をしている機関です。

信用情報機関に照会することで、対象者の銀行からの借り入れ、クレジットカードのローン、消費者金融からのキャッシングといった負債に関する情報を取得できることがあります。

日本の信用情報機関は以下の3社があります。

・全国銀行個人信用情報センター(略称「KSC」)

・株式会社シー・アイ・シー(略称「CIC」)

・株式会社日本信用情報機構 (略称「JICC」) 

 

ただ、一点問題があって、「氏名」「生年月日」に加えて、

「登録時の住所」「登録時の電話番号」の提供が必要になります。

住所は戸籍の附票を取得できれば特定することは難しくありませんが、

電話番号については電話会社を特定する必要し、電話番号を照会する必要がありますし、

その開示された電話番号が、信用情報機関に登録されたときの電話番号とは限りません。

よって、負債については、紙ペースの資料や他の親族からの情報提供が無ければ、どうしても調査しきれない面があると言えます。

 

 

調査が難しいもの

信用情報以外に調査が難しいものとしては、

いわゆるタンス預金、親族や友人知人からの個人間の借金

固定資産税を口座振替にしていない自宅以外の不動産といったものが考えられます。

 

調査先⑤ 不動産がある市町村の税務課

自宅が持ち家の場合は、被相続人の住所から地番と家屋番号を辿れば、特定はそれほど難しくないでしょう。

念の為、該当市町村の税務担当部署に、名寄帳を請求しましょう。

名寄帳とは、所有者ごとにその市町村内で所有している不動産が網羅されている一覧表のことです。

自宅以外の不動産については、固定資産税の支払いが口座振替になっていれば、取引履歴に「オオサカシセ゛イ トチ・カオク」といった記録がされるので、市町村までなら特定することも可能です。

後は、その市町村に名寄帳を請求しましょう。

 

 

調査先⑥ 証券保管振替機構

株式や投資信託について調査する場合は、

まず、証券保管振替機構に照会します。

該当人物がどこかの証券会社に口座を開設してる場合、証券保管振替機構の開示情報に、その証券会社の名称が記載されています。

次に、その証券会社に照会します。

すると、どこの株式を何株持っていて、その評価額がいくらという結果が開示されます。

もし、最初から資料を入手していて、証券会社を特定できているなら、証券保管振替機構への照会ステップは省略しても構いません。

 

今回の記事のような遺産の調査は、様々な機関相手に手続きを取る必要があり、

また、開示された資料を読み解く時間と労力が必要です。

ご自身単独で調査するのが面倒だ大変だという場合は、弊所にお気軽にご相談ください。

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治