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2020年07月06日お役立ち情報

【解決事例】相続の手続きは自分でするので書類の作成だけしてほしい

※本記事は、実際の事件の内容を一部変更したり、複数の事件を再構成しています。

 

事例の概要

最近配偶者を亡くした方が、その相続手続きをしようといざ取り掛かったら、

20年前に亡くなった配偶者の親名義の遺産が、未手続きのままになっているものがあることが判明した。

その親の遺産も含めて相続したいが、20年の間に数次相続や代襲相続が重なり、

親の相続に関する法定相続人は10人を超えてしまい、しかも、日頃疎遠な方ばかり。

なお、遺産の内容は、不動産・預貯金・株式など。

 

 

依頼者の希望は

依頼者の方の希望は、

・手続き本体(相続登記、預金の解約払い戻しなど)は自身でするつもり

・自身が途中まで集めた戸籍をチェックしてほしい

・不足している戸籍があれば代わりに取ってほしい

・手続きに必要な書類(遺産分割協議書や相続関係説明図など)を作成してほしい

・疎遠な方々の分の遺産分割協議書への押印を代わりに集めてほしい

 

手続きを丸ごとお任せではなく、自分でできないところだけ代わりにやってほしいという内容でした。

弊所では、このような部分的なサポートを希望するご依頼もお請けしています。

 

 

サポートの内容は

上の依頼者の希望を踏まえて、次の流れでサポートしました。

① 相談、契約、資料の受領

これまでの経緯を聴き取りし、希望する依頼内容を確認して、委任契約を締結。

合わせて、依頼者の方がお持ちの戸籍や遺産に関する資料を受け取りました。

 

② 戸籍のチェックと収集(相続関係の調査)

受け取った 戸籍をチェックし、相続関係を調査しました。

チェックを進めていく中で足りない戸籍があることが判明したので、

その戸籍については弊所で集めていき、全ての法定相続人を割り出しました。

 

③ 法定相続分の計算

今回、複数の数次相続と代襲相続が発生していたため、法定相続分の計算が複雑で厄介でした。

正直なところ、ある程度相続法の知識が無いと、今回のような年数が経過して法定相続人が格段に増えたケースは、一般の方だけで相続手続きを遂行するのはかなり難しいのではないかと感じます。

 

※数次相続(すうじそうぞく)

被相続人が亡くなって(一次相続)、遺産分割協議や移転登記、名義変更等が済まないうちに、相続人の一人が亡くなり、次の相続(二次相続)が開始されること

※代襲相続(だいしゅうそうぞく)

被相続人が亡くなる前に、被相続人の子や兄弟姉妹が死亡等で相続権を失っていた場合、その子(被相続人から見て孫や甥・姪)が代わりに相続すること

 

④ 書類作成

相続人間でまとまった遺産分割の内容を協議書の形にしました。

今回は、相続人の数が多く、印鑑証明書の有効期限の関係上、早期に全員分の必要書類を集める必要があるため、リンク先の事例同様、分冊形式で準備しました。

【解決事例】コロナに負けず遺産分割協議書を全員分素早く集める方法

合わせて、調査した相続関係を図面の形式にした相続関係説明図も作成しました。

今回は、相続人の数が多く、複雑な相続関係となっていたため、A3用紙3枚分のボリュームになりました。

 

⑤ 遺産分割協議書を発送

各相続人の遺産分割協議書と印鑑証明書の収集は弊所が担当しました。

各人に遺産分割協議書と手続きの案内状を発送し、疑問点がある方には、依頼者に代わって手続き面での説明をしました。

 

⑥ 返送書類の確認

記入押印がされた遺産分割協議書と、協議書に押印された印鑑に関する印鑑証明書は、弊所宛に返送されるようにしていましたので、逐次返送されてきた書類に不備が無いか確認します。

確認点としては主に3つです。

・印鑑証明書記載の住所と氏名が記入されているか

・印鑑証明書と同一の印章で、鮮明に押印されているか

・印鑑証明書の発行日が直近のものか(手続き本体で発行後6か月以内のものの提出を求められるため)

 

⑦ 納品・完了報告

全員分の遺産分割協議書と印鑑証明書が無事に揃ったので、戸籍一式と相続関係説明図と合わせて、依頼者の方に納品しました。

また、その後の手続きは弊所で担当はしませんでしたが、依頼者の方の負担が減るよう、手続きに関する注意点についてもレクチャーさせていただきました。

 

 

遺産分割協議書の工夫 その1

案件の事情を考慮して、今回の遺産分割協議書には2つの条項を入れました。

『本遺産分割協議に判明した被相続人Zの遺産については、相続人Xがその一切を取得する。』

 

今回の依頼のそもそもの発端は、相続手続きが漏れていた遺産があることが判明したことです。

もし、後日、他にも遺産があることが判明した場合、新たに同様の書類を用意しなければいけません。

時が経つことで、法定相続人が更に増えることも考えられます。

これを大変な負担です。

この事態を回避するため、先の条項で明記していない(現状で相続人が把握していない)遺産についても、合わせて相続できるようにしました。

 

 

遺産分割協議書の工夫 その2

もう1つの条項は、

『全ての共同相続人は、遺産目録記載のAからJの遺産が、被相続人Zの遺産であることを確認する。』

 

今回の注意点は、被相続人が亡くなってからかなりの年数が経過しているということです。

相続登記の添付書類の一つに「被相続人の同一性を証する書面」があります。

被相続人の本籍地の記載がある住民票の除票や戸籍の附票がこれに該当します。

不動産登記は、氏名と住所の組み合わせで同一人物であることを確認します。

一方、相続関係の証明書類である戸籍には住所は記載されていません。

このままでは、戸籍の人物と登記名義人が結びつきません。

その間を繋ぐのが「本籍地の記載がある住民票の除票や戸籍の附票」です。

登記簿(住所・氏名)→住民票の除票(住所・氏名・本籍地)→戸籍(氏名・本籍地)

 

しかし、この「住民票の除票」「戸籍の附票」の保管期間は、除票・除籍となってから5年間です。

大雑把に言うと、亡くなってから5年を過ぎるとこの書類は取れません。

つまり、被相続人の同一性の証明に問題が生じます。

そして、今回も該当の書類は既に廃棄された後でした。

登記実務では、それを補完するために被相続人名義の登記権利証などを添付したりするのですが、

最初の相談時に、登記権利証の所在は分からないとのお答えでした。

そこで、代わりの補完方法として、

「この不動産の名義人は被相続人に間違いない」と相続人全員が保証した書面を添付することにしました。

それが『◯◯の遺産が、被相続人Zの遺産であることを確認する。』旨の条項がある遺産分割協議書です。

この条項を一つ入れておくことで、後に控える相続登記の問題点を一つ潰すことができました。

 

 

最後に

『【解決事例】相続の手続きは自分でするので書類の作成だけしてほしい』いかがでしたか。

今回のように、書類作成メインの依頼についても、相続の専門家の視点から、先を見据えたサポートができます。

遺産相続に関するご相談なら、木戸司法書士・行政書士事務所にお任せください。

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治