ブログ BLOG

2020年02月08日お役立ち情報

<転記中>相続のプロが実践する相続登記の流れと進め方

今回は、私が相続登記の依頼を受けたときに、実際どのような手順で手続きを進めていくのかをお話します。

不動産の所有者が亡くなり、法定相続人(民法の定めるによる相続人)が配偶者と2人の間の子供たち、相続の方法は、相続人たちによる話し合い=遺産分割協議で決定する、というケースとします。

 

① 相続不動産の特定

まず、手続きをする必要がある不動産を特定します。

その為の資料として、私が依頼者の方から相談を受ける際に用意していただくのが、

「固定資産税の納付通知書の課税明細」です。

毎年4~6月頃に、その不動産がある各市町村から、不動産の名義人の方(被相続人)宛に届いているはずなので、そちらを用意していただき、土地なら「所在」「地番」、建物なら「所在地」「家屋番号」を確認します。

いわゆる不動産の権利証(又は登記識別情報通知)は、絶対に必要というわけではありません。

調査資料として参考になったり、提出書類として必要になることもありますが、大抵の場合、権利証が無くても相続登記の手続きを進めることができます。

 

 

② 相続不動産の調査

不動産が特定できたら、登記情報提供サービスというインターネット上のサービスを使って、法務局が管理している登記簿のデータ(登記情報)を取得し、その不動産を調査します。

専門職じゃない一般の方なら、最寄りの法務局の証明書コーナーで登記事項証明書を取得してください。

登記事項証明書とは、いわゆる「不動産の謄本」です。

登記情報も登記事項証明書も、内容は同じです。

登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取得できます。北海道の土地の登記事項証明書でも沖縄の法務局で取得できます。

 

登記情報で確認することは、概ね次のことです。

・不動産の種類(宅地、居宅など)や面積

・被相続人がその不動産の名義人か、共有ならその持分の割合

・登記簿上の被相続人の住所

・抵当権などの権利が付いていないか

 

気をつけなければいけないのは、被相続人が所有者又は共有者でありながら、課税明細に記載されていない不動産がある場合です。

周辺の住民の方たちと生活道路を共有している場合、課税明細に記載されていないことがあります。

この場合、名寄帳を取得したり、地図や公図を取得し、周辺にそれらしき土地が無いか確認します。

名寄帳は、不動産所在地の市区町村の固定資産税の担当部署で、

地図や公図は、共用の持分道路が登記事項証明書同様に法務局の証明書コーナーで取得できます。

もし、不動産を取得したときの権利証(登記識別情報通知)があるなら、そういった不動産が記載されていることがあるので、念の為、確認された方がいいでしょう。

 

 

③ 相続関係の調査

次は、被相続人の戸籍謄本を取得して相続関係を調査し、法定相続人を特定します。

法定相続人を特定することで、遺産分割協議書に押印すべき人も特定できますし、法定相続分の計算もできるようになります。

戸籍は本籍地の役所で取得できます。

もし、本籍地が分からない場合は、最後の住所地がある役所で本籍地の記載がある住民票を取得します。

 

手順としては、

1)被相続人の最後の住所地の役所で、住民票の除票(本籍地の記載あり)を取得する

2)被相続人の最後の本籍地の役所で、亡くなったことの記載がある一番新しい戸籍謄本を取得する

3)そこから、時代をさかのぼりながら、生まれた時期の戸籍謄本まで取得する

4)被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を全て取得できたら、子どもたちの最新の戸籍(被相続人が亡くなった時点でその相続人が存命であったことがわかるもの)を取得する

 

私の経験則としては、相続人が配偶者と子供数名の場合、概ね一ヶ月あれば必要な戸籍は全て揃います。

なお、被相続人の戸籍は謄本(省略されてないもの)が必要ですが、相続人については抄本(その人に関する記載だけのもの)でも大丈夫です。

 

 

④ 書類の作成

③まで済んだら、相続関係説明図と遺産分割協議書を作成します。

相続関係説明図は、家系図のような、③で調査した相続関係を書類にしたものです。

そして、①から③の間に相続人の皆さんで遺産の分け方を話し合っていただき、決定した分配の方法を遺産分割協議書という書類にします。

なお、相続関係説明図に代えて法定相続情報一覧図という書類を準備することもあります。

一つの法務局に相続登記をするだけの場合は、相続関係説明図で十分なのですが、

不動産以外の遺産、預貯金や株式についても相続手続きが予定されている場合は、法定相続情報一覧図にした方が便利です。

「現在,相続手続では,お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を,相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があります。法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。」(引用元:法務省HPより)

銀行の窓口の人が、十何通もある戸籍の束を毎回一からチェックする必要が無くなりますので、手続きの処理スピードが格段に早くなりますので、提出先が複数ある場合は、オススメです。

 

 

⑤ 遺産分割協議書に押印

遺産分割協議書の準備ができたら、相続人全員に印鑑証明書を用意していただき、皆さんに署名と実印の押印をお願いします。

相続人の方全員が一同に会する場に私が出向き、全員分の署名と押印をその場でいただくこともあれば、

代表相続人の方に書類を渡して、全員分の署名押印と印鑑証明書が揃ったら、私が受け取るということもありますし、

遠方の相続人の方や、相続人同士が親しい間柄でない場合は、私がそれぞれの方のところに出向いたり、郵送で書類をやり取りすることもあります。

相続人の人数や場所、手続き全体の所要期間、相続人間の関係性、出張の日当など費用の問題、これらの諸事情を考慮・説明し、相続人の方と相談のうえ、最適と思われる方法で進めていきます。

 

 

⑥ 相続登記申請

全ての添付書類が集まったら、その添付書類と登記申請書を管轄の法務局に提出します。

申請する不動産がどこの法務局の管轄になっているかは、次の法務省のリンク先を参照してください。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

 

提出の方法は、次の3つの方法があります。

①法務局の登記所の窓口に持参する

②郵送で申請する

③オンラインで申請する

私は、③のオンライン申請を利用することが多いです。

 

遺産分割協議を経た場合の一般的な必要書類です。

①登記申請書

②被相続人の登記簿上の住所から最後の住所の繋がりがわかる住民票又は戸籍の附票

③被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本

④相続人全員の戸籍謄本(抄本でも可)

⑤相続関係説明図

※③~⑤に代えて、法定相続情報一覧図でも可

⑥登記名義人になる相続人の住民票又は戸籍の附票

⑦遺産分割協議書

⑧相続人全員の印鑑証明書

⑨不動産の課税価格がわかるもの(固定資産税の評価証明書、固定資産税の課税明細、名寄帳)

⑩登記名義人になる相続人から司法書士への委任状

※ご自身で登記申請される場合は委任状は不要です

 

 

⑦ 登記完了書類の受け取り

登記が完了したら、法務局から発行される書類と還付される添付書類の原本を受け取ります。

受け取りの方法は、登記所の窓口で受け取る方法と郵送で受け取る方法があります。

法務局の窓口で受け取る場合は、申請書に押印した印鑑と運転免許証等の本人確認書類を持参します。

郵送を希望される場合は、登記申請書と合わせて、返送用の封筒と切手も合わせて提出します。

郵送の方法は、書留等の手渡し配達できる方法に限られています。

私は、最寄りの天王寺出張所以外は、郵送での返送を希望しています。

 

 

⑧ 登記完了の確認

登記が完了したら、登記事項証明書を取得して、申請どおりに登記がされているかを確認します。

オンライン申請した場合は、登記が完了したらその通知が来ます。

⑦の受け取りを郵送でする場合は、書類が郵送されてくることが完了したことが分かります。

窓口で申請し、受け取りも窓口でする場合は、登記完了予定日以降に登記事項証明書を取得しています。

なお、大阪府内の登記完了予定日は、こちらのリンクから確認できます。

http://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/static/kanryobi.html

 

 

⑨ 納品

登記が問題なく完了していることが確認できたら、事件の記録をつけ、依頼者の方に引き渡す書類を整理し、登記識別情報通知(いわゆる権利証)が重要な書類であることが一目みて分かるように製本します。

書類の返却の準備が整ったら、書留で依頼者のご自宅などに郵送します。

お近くの方でご希望であれば、弊所やご自宅で引き渡しをさせていただきます。

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治