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2020年02月17日解決事例

<転記中>【解決事例】遺産に預貯金がある場合の相続手続きの方法と流れ

これは、私が成年後見人を務めていた方がお亡くなりになったケースです。

 

①きっかけ

法定代理人である成年後見人は、本人である被後見人がお亡くなりになると代理権が消滅=後見人としての通常業務が終了し、後は、就任期間中の収支の計算を行い、被後見人の相続人に対して、財産を引き渡します。

財産の引き渡しは、必ずしも相続人全員に対してする必要はなく、このケースでは、一番近くにお住まいの方(以降「代表者」とします)に引き渡しを行いました。

その引き渡しの場で、遺産整理手続きについても引き続きお願いしたい旨の打診をいただきました。

 

 

②他の相続人の意向確認

ただ、手続き上ネックとなるのは、その代表者お一方だけの依頼では手続きを進めることができないため、他の十数名の相続人の方からも同様に依頼を受ける必要があり、その中には代表者の方が日頃あまり連絡を取っていない方もいらっしゃるということです。

つまり、遺産の分け方を話し合う=遺産分割協議にすぐに取りかかれず、さらに、全員が分配方法に同意するか目処が立っていない状態です。

全員が同意せず、分配方法で揉める=紛争性が発生するなら、弁護士案件となります。

司法書士・行政書士の私では、取り扱えなくなります。

そこで、代表者の方のメッセンジャーとして、私が他の相続人の方と連絡を取り、遺産分割のご意向を確認することとしました。

結果、皆様から法定相続分で遺産を分配したいとのお返事をいただけましたので、正式に相続人全員から遺産整理手続きのご依頼としてお受けしました。

ここで私がしたことは次のことです。

・相続人の特定調査

・遺産目録の作成

・各人の法定相続分の計算

・他の相続人全員に手紙を送り、経緯と遺産の内容と法定相続分を説明し、手続きの選択肢を提示

・遺産分割に関する意向のとりまとめ

 

 

③遺産分割協議書の作成

②で相続人全員の合意が取れたので、法定相続分で遺産を分配する内容の遺産分割協議書を作成します。

預貯金債権の特定方法については、私はこのような記載にしています。

「ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 *****-********」

「◯◯信用金庫 ◎◎支店 定期預金 口座番号 ******」

このケースでは、「相続手続きにかかった費用を差し引いて残った金額のうち、Aは◯分の1、Bは◯分の1、Cは◯分の1を取得する」という条項をメインに据え、「代表者の方を代表相続人として手続きをする」という内容も円滑な手続きのために付け加えました。

 

 

④手続きの調査確認

相続登記を申請する法務局と違い、預貯金の手続きの場合、各金融機関で必要な書類の要件が違います。

手続きの請求用紙も、各社独自の書式が用意されており、その記入内容も各社で異なりますので、各社ごとに必要な書類を確認します。

このケースでは、ゆうちょ銀行と信用金庫3社で口座を開設していましたので、ゆうちょ銀行はWEB申し込みで請求用紙等の発行をし、信用金庫は全て近場だったので、各支店に赴き請求用紙を集めました。

 

概ね、こういった書類の提出を求められることが多いです。(代理人による手続きの場合)

①独自様式の請求用紙

②被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本

③相続人の戸籍謄本(抄本でも可)

※②③に代えて、法定相続情報一覧図でも可、むしろ推奨

④相続人全員の印鑑証明書

⑤相続人全員から遺産整理代理人への委任状

⑥遺産整理代理人の本人確認書類、印鑑証明書

③④は、発行後3~6か月以内のものを求められることがほとんどです。

遺産分割協議書は、必ずしも提示を求められるわけではありませんが、作成自体はしておきべきと考えます。

 

 

⑤必要書類の手配

遺産分割協議書、各社の請求用紙、委任状、遺産整理の委任契約書に署名と実印での押印をいただきます。

合わせて、有効期限内の印鑑証明書を1通用意していただきます。

相続人の皆さんが一堂に会することができれば、時間と手間を大幅に短縮できるのですが、それは叶わないので、各人に連絡を取り、ご自宅に訪問したり、弊所にご来所していただいたり、郵送でやり取りしたり、円滑な手続きと皆さんのご都合とのバランスを取りながら、適切な方法を選択していきます。

 

 

⑥手続きの代行

必要な全ての書類が揃ったら、各金融機関で預貯金の解約・払戻し手続きを行います。

所要時間は、窓口の順番が来てから、概ね1~2時間ほどでしょうか。

法定相続情報一覧図があれば、相続関係のチェックはスムーズに進みます。

ゆうちょ銀行の場合、店舗では書類の事前確認と受付のみで、実際の処理はエリアごとのセンターで行われます。

ゆえに、ゆうちょ銀行の場合は、即日完了というわけにはいきません。

払戻金は、預り金という形で、預り金専用の口座で遺産の分配前まで私が責任をもってお預かりします。

そのため、委任状には代理人による受領を可とする委任事項を入れておきます。

 

 

⑦遺産の分配

全ての金融機関の解約・払戻し手続きが完了したら、相続人の方々に遺産を分配します。

あらかじめ、⑤で皆さんの振込先を確認していましたので、そちらに振り込みます。

私の依頼の報酬と実費は、分配前に差し引く形で頂戴しました。

このケースは、兄弟姉妹に代襲相続が絡んでいましたので、単純な相続人の頭割りではなく、きっちり民法に則った法定相続分の計算が必要になります。

例えば、

弟の山田次郎さんには4分の1、

先に亡くなった妹の山田和子さんの子供(被相続人の甥、姪)Aさん、Bさん、Cさんは12分の1

先に亡くなった弟の山田三郎さんの子供(被相続人の甥、姪)Dさん、Eさんは8分の1

先に亡くなった妹の山田敏子さんの子供(被相続人の甥、姪)Fさん、Gさん、Hさん、Iさん、Jさんは20分の1

といった具合です。

 

 

⑧完了の報告

遺産の分配が終了したら、明細をつけた報告書と遺産分割協議書を、相続人の皆さんに発送し、手続きの完了を報告して、終了となります。

窓口となっていただいた代表者の方には、お近くということもあって弊所までご来所いただき、対面して最後の報告とお礼を申し上げました。

 

 

⑨こんな人はご相談ください

・兄弟姉妹の代襲相続で関係者が多い、日頃連絡を取っていない親族も大勢いる

・兄弟姉妹の代襲相続で関係者が多い、法定相続分の計算なんてとてもできそうにない

・もう高齢で、何箇所も金融機関に手続きしに行くのは大変

・仕事で忙しくて、平日の昼間に何箇所も金融機関に行く時間なんて無い

という方、相続人が多い預貯金の相続手続きは木戸司法書士・行政書士事務所にお任せください!

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治