2020年02月24日相続登記
遺言書に不備がある場合の相続登記のやり方【解決事例】
はじめに
本記事では、配偶者が遺した自筆の遺言書(自筆証書遺言)の内容に不備があった場合の相続登記について、私が体験した事例を基に、解説します。
遺言書にはどんな不備があったのか?
遺言書の検認手続を終えた後、開封された遺言書の内容を確認したところ、不備があることがわかりました。
「自宅の不動産を配偶者に相続させる」という内容だったのですが、
その自宅の不動産の特定方法が『住居表示の住所』によるものだったのです。
つまり、
「大阪市天王寺区上汐四丁目 地番4番の土地、大阪市天王寺区上汐四丁目4番地 家屋番号4番23の建物」
と本来書くべきところを、
「大阪市天王寺区上汐四丁目4番23号の土地と建物」
と書いてあったのです。
地番・家屋番号とは、法務局の登記所が一つの土地ごと・建物ごとに付けている番号のことです。
登記簿上の不動産は、この地番と家屋番号で管理されているため、
遺言書でも、住居表示の住所ではなく地番と家屋番号で書くべきだったのです。
おそらく、ご自身だけで作成されたのでしょう、
日頃よく使っている住居表示の住所で書いてしまわれたのですね。
遺言書の不備には通常どう対処するのか?
地番・家屋番号で書かれていないため、審査する登記所としては、遺言書で指定されている不動産が今回登記申請する不動産だとわかりません。
つまり、このままでは相続登記が受理されません。
こういうケースのときのセオリーとしては、
法定相続人全員が『上申書』に実印を押印し、全員分の上申書と印鑑証明書を提出する
という方法があります。
ちなみに、『上申書』とは、
「遺言書の不動産は、地番・家屋番号が書いてないけど、今回登記申請する不動産に間違いありません。だから、申請を受理してください。」
という登記所に対して弁明する文書のことです。
しかし、このケースの配偶者以外の法定相続人は、被相続人の兄弟姉妹とその子供たち(代襲相続人)で、
被相続人と配偶者は、他の法定相続人らと長年疎遠であったためか、
呼びかけ自体はしましたが、協力は得られませんでした(呼びかけへの反応自体が無かった)。
今回はどのように対応したのか?
「遺言書に書いてある不動産は申請している不動産に間違いないだろう」
という心証を登記官に持ってもらえればいいので、
次の書類を揃え、登記所と打ち合わせを進めました。
結果、依頼者の方が望む形で相続登記が受理されました。
①配偶者一人分の上申書と印鑑証明書
②自宅不動産の住居表示実施の証明書
※住居表示実施前の被相続人の住所の番地が、所有不動産の地番と繋がっていることを証明
③自宅不動産付近のブルーマップのコピー
※その地番上の建物の住居表示が、被相続人の住所であることを証明
④被相続人に関する固定資産税課税台帳の名寄帳
※同一区内には、他に被相続人の所有不動産が無い=遺言書に書いてある不動産は自宅以外に考えられないことを疎明
最後に
『遺言書に不備がある場合の相続登記のやり方【解決事例】』いかがでしたか?
自筆の遺言書は、民法の規定により、次の要件を満たさないと、せっかく書いた遺言書が無効となります。
民法 第960条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
民法 第968条第1項
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
また、今回のケースのように、要件自体は満たしていても、
その書き方次第で、遺言者の遺志を実現するための手続きができない恐れがあります。
ご自身で遺言書を書かれる場合であっても、弁護士や司法書士といった専門家のアドバイスを受けた方が良いと私は考えます。
弊所では遺言書の作成のサポートをしていますので、お気軽にご相談いただければと存じます。
この記事が何かの参考になったのならば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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執筆者:司法書士・行政書士 木戸瑛治
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