2020年04月20日お役立ち情報
相続した不動産を売って代金を分けたいときに知っておくべきこと
相続した親の不動産を売って、その代金を相続人たちで分けたいというご依頼をいただくことがあります。
どんな手続きをしたらいいでしょうか。
相続人たちの希望は
大阪市内に自宅不動産を所有していたWさんが亡くなり、X・Y・Zの3人の子どもがいるとします。
Xさんは大阪在住ですが、Yさんは東京、Zさんは北海道に住んでいます。
それぞれ家庭を持ち、自宅の不動産を所有しているため、Wさんの自宅不動産に住みたい人はいません。
話し合いの結果、Wさんの自宅不動産は売却して、その売却代金を3人で3分の1ずつ分けることになりました。
手続きの選択肢は
売却にあたり、あらかじめ、Wさんから相続人に名義を変更する相続登記をする必要があります。
相談やご依頼の際にたまに質問をいただくことがありますが、
今回のようなケースで、相続登記を飛ばして売却することはできません。
さて、この場合、2つの手続きの選択肢が考えられます。
プラン A
① X・Y・Z の3人が持分3分の1ずつの共有名義で相続登記をする
② X・Y・Z の3人が売主として、売買契約をする
③ X・Y・Z がそれぞれ3分の1ずつ売買代金を受け取る
プラン B
① X・Y・Z の3人のうち、1人代表者(仮にX)を決めて、その人の単独名義で相続登記をする
② X 1人が売主として、売買契約をする
③ X が売買代金全額を受け取り、Y・Z に売買代金をそれぞれ3分の1ずつ分配する
遺産分割をする3つの方法
遺産分割は、次の3つの方法があります。
今回述べる方法は換価分割といい、
不動産などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人たちで分割する方法です。
他の2つは、現物分割・代償分割です。
一般的なケースでは、現物分割と換価分割の組み合わせが多く使われている印象があります。
・現物分割
故人が所有していた車や不動産などの遺産を、相続人が現物で分け合う分割方法です。
不動産はX、現金はY、車はZ、という具合です。
遺産を単独で所有できるメリットがありますが(特に不動産)、
遺産の価値の差が大きい場合は、法定相続分どおりに遺産を分けることが難しいというデメリットがあります。
・代償分割
一部の相続人が故人の遺産を相続した代わりに、他の相続人にそれに見合う代償金を支払う分割方法です。
Xが不動産(評価額3000万円)を相続し、XからYとZに現金で1000万円ずつ支払う、という具合です。
現物分割同様、特定の相続人が不動産など遺産を単独で所有できるメリットがありますが、
その相続人が(場合によっては多額の)代償金を支払う必要があるという経済的なデメリットがあります。
どちらのプランが良いか
換価分割のプランAとプランBは、どちらの方が良いでしょうか。
相続人全員分の労力でいうと、プランBの方が楽です。
相続登記も、売買契約も、残代金決済(と不動産の引き渡し)も、
手続きをするのは、全て代表相続人Xだけで済むからです。(遺産分割協議書の作成にはYとZの協力も必要です)
特に、残代金決済については、不動産が大阪にある都合上、買主も現地の人や会社になりやすいので、
現地の大阪で行われることが多いでしょう。
プランAで進める場合、今回のYとZのような遠方のお住まいの方も遥々これに出席する必要があり、大変な負担となります。
遠方の方は当日欠席して、近場のXだけが代表として出席するとしても、
売買無効のリスクを避けるため、売買の登記を担当する司法書士(または買主)は、
YとZの本人確認と意思確認は必ず事前にする必要があります。
それぞれ司法書士が出張して確認するとなると、少なくない日当や旅費も発生します。
よって、手続き面での負担を考えると、プランBの方が良いでしょう。
逆に、相続人の人数が少なく、皆さんのお住まいが近場なら、プランAでも良いと考えます。
遺産分割協議書の書き方に注意
しかし、換価分割のプランBで手続きを進める場合、注意点があります。
それは、③の売却代金の分配がXからY・Zへの贈与とみなされないようにしなければいけないということです。
贈与とみなされると、その金額によっては、YとZに贈与税が課税されることになります。
それを回避するためには、換価分割をすることが分かるように遺産分割協議書を作成する必要があります。
この方法で手続きをする場合は、専門家に依頼するなり、相談するなりされた方が良いでしょう。
参考として、代表者の単独名義で換価分割をする場合に、私が使用している雛形を例示します。
※個別のケースでの成否は保証しかねますので、あらかじめご承知おきください。
第1条
相続人 Xは、被相続人 Wが所有する次の不動産を取得する。
① 所在 大阪市天王寺区上汐四丁目
地番 ◯番
地目 宅地
地積 ◎㎡
第2条
Xは、前条で取得した不動産を売却して換価し、その売却代金から当該不動産の保存及び管理に要した費用、並びに当該不動産の売却に要した費用等を控除した残金のうち、その3分の1を相続人 Yに、その3分の1を相続人 Zに分配する。
本当のゴールに向かって
今回のモデルケースのゴールは、相続登記ではなく相続不動産の売却です。
私は、これまでに相続登記をして、不動産の売却を希望されるご依頼を複数お受けして、
相続登記だけでなく、その後の売却もサポートしてきました。
具体的には、不動産業者のご紹介です。
不動産登記の専門家である司法書士は、一般的に複数の不動産業者と業務提携しています。
弊所では、不動産の所在地や特徴などを考慮し、適切と思われる業者の方をご紹介してきました。
もし、相続人の方にお知り合いの業者さんがおらず、紹介者もいない場合は、
飛び込みやネット検索などをして、ご自身で探すことになります。
故人がお亡くなりになった後の諸々の整理などもある中、これは大変なご苦労だと思います。
また、一見の業者さんと1から信頼関係を築かなければなりません。
私がご紹介する不動産業者は、信頼のおける方ばかりですし、
業者さんへの最初の資料提供、情報の取りまとめについては、私の方でさせていただきますので、
安心してお任せいただければと思います。
不動産の相続手続きなら、木戸司法書士・行政書士事務所にお任せください!
その後の売却も見据えて、サポート致します!
執筆者
司法書士・行政書士 木戸 英治