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2020年06月01日お役立ち情報

【相続対策】自分で遺言を書くときに注意したいこと

新型コロナウイルスの感染流行により先行き不安な昨今、遺言に関するご相談が増えています。

 

遺言を書いた方がいいのはどんな人?

私は、これまでの経験に基づき、こんな人はぜひとも遺言を遺しておくべきだと考えます。

 

・子供のいない高齢の夫婦

後々、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になるパターンです。

有効な遺言が無いと、兄弟姉妹(場合によってはその子)の方たちの協力が必要となります。

法定相続人の人数が一気に膨れ上がり、手続きに掛かる時間も費用も跳ね上がります。

日頃から疎遠な方だと、手続きに協力すらしていただけない場合がありますし、法定相続分に相当する見返りを要求される方もいらっしゃいます。

必要な手続きを説明した後の「あの人達、関係ないのに・・・」という依頼者のぼやきは忘れることができません。

 

・配偶者も子供も孫もいない高齢者で、一人っ子(兄弟姉妹がいない)の人

法定相続人自体がいないパターンです。

このままだと財産は国庫行きになります。

自分の従兄弟やその子供たち、先にお亡くなりになった配偶者の連れ子や配偶者側の親族など、法定相続人ではないけれども、日頃仲が良かったり、お世話になった方に財産を残したいと考えるなら、ぜひとも遺言を遺されるべきです。

「特別縁故者に対する財産分与」という事後的な制度はありますが、裁判所への手続きが必要となりますし、分与が認められるまでに一年以上の時間が掛かります。また、必ず希望どおりに分与が認められるとは限りません。

 

・実家の不動産などの特定の財産を特定の相続人に渡したい人

長男の方に実家の不動産を相続させたかったパターンです。

お亡くなりになる直前にご家族に向けて言葉では意思表示をされていたのですが、法的に有効な遺言書として遺していなかったため、ご家族が1から話し合いをして手続き完了までに時間が掛かってしまいました。

 

 

自分で遺言を書くときに絶対に守るべきことは?

それでは、いざ自分の遺言を遺したいとなったなら、どうしたらいいでしょうか。

方法は大きく分けて2つあります。

自分で書くか、公証人に書いてもらうか、です。

自分で書く場合、絶対に守らないといけないことがあります。

それは、法律に則って書くということです。

※民法 第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

ルールを守っていない遺言は無効です。書き損です。

そして、そのことに気づくのは、遺言書を遺した人が亡くなって、相続人がその遺言書を使って手続きをしようとしたときかもしれません。

 

そして、自分だけで書ける遺言(自筆証書遺言)の場合のルールとは、

・紙に

・遺言を残す本人が

・遺言の全文と日付と自分の名前を手書きし、

・名前の横に捺印する(認印可)

です。

※民法 第968条第1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

ということは次の方法はダメです。

・家族や第三者に口頭だけで伝える

・家族や第三者が書く

・パソコンで作成したものを印刷する

 ※ただし、法改正により目録部分だけパソコン作成のものも認められました

・分量が多い遺言の部分だけパソコンで作成し、日付と名前は手書きする

・印鑑を捺していない

他にも、こんな遺言は駄目と言われています。

・配偶者と連名で2人の遺言が一体になっているもの

・日付が具体的に特定できない「令和2年5月吉日」

 

 

内容はシンプルにしよう

しかし、上の決まりを守っていても、実際の相続手続きで使えないこともあります。

多いのが、相続(遺贈)する財産の特定の仕方を間違えた場合です。

下のリンクは、私が過去に実際に解決した、財産の特定の仕方を間違えた遺言に関する事例です。

https://ekido-souzoku.com/2020/02/24/%e3%80%90%e8%a7%a3%e6%b1%ba%e4%ba%8b%e4%be%8b%e3%80%91/

せっかく後に遺された人たちのために書いたのに、その人たちに迷惑が掛かっては元も子もありません。

私の個人的な考えとしては、自筆証書遺言の場合、こういった間違いをしないように、

遺言の内容はできるだけシンプルにすべきです。

『私の全財産は、妻(夫)◯◯◯◯に相続させる。』

これだけです。これなら、書き方による間違いは起きないはずです。

もし、もっと細かい分配方法を考えているなら、そういう方は自筆証書遺言ではなく、公証人と相談できる公正証書遺言のすべきです。

 

 

自筆で細かく書くならこういう書き方で

自筆にこだわりたいという方は、あらかじめ弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談のうえ書くべきと考えますが、

一応、書き方の一例を載せておきます。

 

<不動産の場合>

住所ではなく、土地なら所在と地番、建物なら所在と家屋番号を書きましょう。

『私が所有する下記不動産の全てを妻(夫)◯◯◯◯に相続させる。

 A.所在 大阪市天王寺区上汐四丁目

   地番 40番6 の土地

 B.所在 大阪市天王寺区上汐四丁目40番地6

   家屋番号 40番6 の建物

 C.所在 大阪市天王寺区六万体町1番地27

   家屋番号 1番27の2535 の区分建物

   敷地権の表示 

   符号1

所在 大阪市天王寺区六万体町1番地27

   所有権 10万の100』

 

<預貯金の場合>

『私名義の下記預貯金債権は全て妻(夫)◯◯◯◯に相続させる。

 A.ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 ◇◇◇◇◇-◇◇◇◇◇◇◇◇

 B.ゆうちょ銀行 定額貯金 記号番号 ◇◇◇◇◇-◇◇◇◇◇◇◇◇

 C.三菱UFJ銀行 上本町支店 普通預金 口座番号 ◇◇◇◇◇◇◇

 D.三井住友銀行 上町支店 定期預金 口座番号 ◇◇◇◇◇◇◇』

 

 

新しい制度も活用しよう

昨年から自筆証書遺言に関する新しい制度が始まり、財産目録については、自筆の手書きによるものでなくても認められることになりました。

例えば、遺言の本文は、次の内容を自分で手書きします。

 

『私が死亡したら、私の財産は次のように分配するものとする

1.別紙財産目録1記載の不動産A及びBを◯◯◯◯に相続させる。

2.別紙財産目録1記載の不動産Cを◯◯◯◯に遺贈する。

3.別紙財産目録2記載の預貯金債権Dを◯◯◯◯に相続させる。

4.別紙財産目録2記載の預貯金債権Eを◯◯◯◯に遺贈する。』

 

そして、次のような財産目録をパソコンで作成し、紙に印刷します。

財産目録1

A.所在 大阪市天王寺区上汐四丁目

  地番 40番6 の土地

B.所在 大阪市天王寺区上汐四丁目40番地6

  家屋番号 40番6 の建物

C.所在 大阪市天王寺区六万体町1番地27

  家屋番号 1番27の2535 の区分建物

  敷地権の表示 

  符号1

所在 大阪市天王寺区六万体町1番地27

  所有権 10万の100』

財産目録2

D.ゆうちょ銀行 通常貯金 記号番号 ◇◇◇◇◇-◇◇◇◇◇◇◇◇

E.ゆうちょ銀行 定額貯金 記号番号 ◇◇◇◇◇-◇◇◇◇◇◇◇◇

 

なお、財産目録については、次の点に注意してください。

・パソコン等で作成したものでも可

・ただし、手書きではない目録は、遺言本文と同一の紙に記載してはいけない

・目録は、上のような形式でもいいし、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーを目録として添付することも可

・目録の各ページに遺言者が署名押印する

・押印する印鑑は、遺言本文に押印したものと同一でなくても可

・目録を紙の両面に印刷した場合は、両面とも署名押印する

・目録と遺言本文は、ホッチキス等で綴じたり、契印しなくても可。ただし、本文と一緒に保管されるのが望ましい

 

 

遺言の種類は

今回は、自筆証書遺言にスポットを当てて書きましたが、遺言の種類は他にもあります。

遺言には、通常の場合に行う3つの普通方式と、病気や事故に遭って死期が迫っているという特別な事情のときに行える4つの特別方式があります。

それぞれの方式の特徴を記します。

◯がメリット、▲がデメリットです。

自筆証書遺言(普通方式)

・ 遺言者自らが、紙に、遺言全文・日付・氏名を手書きし、署名押印する

・ 原則手書きだが、近時の民法改正により、目録についてのみ,パソコン等で作成したもの、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書等を添付することが認められた

◯ 好きなときに気軽に書ける

◯ 費用がかからない

▲ 法的に不備があっても気づかず、無効な遺言を遺す恐れがある

▲ 遺言書を用いて相続手続きをするには、家庭裁判所の検認手続が必要

▲ 遺言書を発見した者が、遺言を破棄したり、隠したり、改ざんをする恐れがある

 

公正証書遺言(普通方式)

・ 遺言者が、公証人の面前で遺言の内容を話し、公証人がそれを文章にまとめて、公正証書遺言として作成する

・ 利害関係のない証人2人が立会う、なお、証人の当てがない場合は公証役場で紹介可能(日当発生)

◯ 自書する必要がない

◯ 公証人に相談しながら作成できる

◯ 方式の不備で遺言が無効になるおそれがない

◯ 遺言書を用いて相続手続きをするのに、家庭裁判所の検認手続が不要

◯ 原本が公証役場に保管されるので、遺言書が破棄、隠匿、改ざんされる恐れがない

▲ 費用がかかる

 

秘密証書遺言(普通方式)

① 遺言者が遺言書を作成する

② その遺言書に封をし、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印する

③ 公証人と証人2人にその封書を提出し、自己の遺言書であることと、自身の氏名住所を述べる

④ 公証人が封紙上に日付と遺言者の申述を記載し、遺言者と証人と共にその封紙に署名押印する

◯ 作成は自書じゃなくても可。ワープロソフトで作成したものでも、遺言者以外の者が筆記したものでも可。ただし、遺言書本体には遺言者が署名押印をする

◯ 遺言書が遺言者本人のものであることが明確にできる

◯ 遺言の内容を誰にも秘密にすることができる

▲ 公証人が遺言書の内容を確認できないので、法的に不備があっても気づかず、無効な遺言を遺す恐れがある

▲ 遺言書を用いて相続手続きをするには、家庭裁判所の検認手続が必要

▲ 公正証書遺言ほどでは無いが費用がかかる(定額1万1000円)

 

・死亡危急時遺言(特別方式)

病気などにより死期が迫った者がする遺言です。

三人以上の証人が立会い、そのうちの一人に遺言者が遺言の趣旨を口で伝え(口授)、口授を受けた証人がその内容を筆記します。

・難船危急時遺言(特別方式)

船に乗っている者が遭難により死期が迫った者がする遺言です。

二人以上の証人が立会い、その前で遺言者が遺言の趣旨を口で伝え(口授)、口授を受けた証人がその内容を筆記します。

・伝染病隔離者遺言(特別方式)

伝染病のため行政処分により隔離されている場合にする遺言です。

伝染病に限らず、災害等により外部と遮断されている場合にも適用されると解釈されています。

警察官1人と証人1人が立会い、遺言書を作成し、遺言者、遺言書の代筆者、立会人、証人が、遺言書に署名押印する必要があります。

上記2つと違い、死期が迫っていることは要件とされていません。

 

・在船者遺言(特別方式)

船に乗っている者がする遺言です。

船長または事務員の一人と、二人以上の証人が立会い、遺言書を作成し、遺言者、遺言書の代筆者、立会人、証人が、遺言書に署名押印する必要があります。

 

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

遺言には様々な種類とその特徴があり、また、守るべき決め事があります。

あなたが築きあげてきた財産を、最期に、誰に、どのように渡すのか。

心残りがないよう、ちゃんとした遺言を遺してほしいと私は思います。

自筆証書遺言の作成に関するご相談があれば、木戸司法書士・行政書士事務所にお任せください。

 

執筆者

司法書士・行政書士 木戸 英治